オンラインによる連続講座のラインナップが決まりました

オンラインによる連続講座のラインナップが決まりました。日程と内容をお知らせいたします。申し込み方法につきましては後日告知いたします。

文化センターアリラン2020年度連続講座(オンラインで行います)

現代韓日・朝日関係の「棘」

日韓基本条約(1965)の歴史的・現在的考察

◆趣旨文

第2次安倍政権成立から現在までの8年間で、朝日関係はいうまでもなく韓日関係も急速に悪化しました。最大の原因は、朝鮮人強制連行と日本軍「慰安婦」問題をはじめとする被害者に対する補償と、植民地支配をめぐる歴史認識の問題です。

この間、韓国では2018 年 10 月、大韓民国大法院が韓国人強制動員被害者の訴えを認定し、新日鉄住金(現日本製鉄)に対して賠償を命じる判決を確定させました。これは被害者の声が圧殺され続けてきた戦後補償の歴史のなかで大変画期的なものであり、国際人権法の進展とも歩調の合うものでした。それに対し、日本政府は1965 年の日韓請求権協定 によって「解決済み」だ、「国際法違反」だと韓国政府を批判し、それに乗じるように政治家・官僚による暴言が続き、マスコミと論壇、サブカルチャーやインターネット上の言論もほぼ韓国批判一色となりました。

日本による朝鮮植民地支配の諸犯罪行為に対する賠償は、本当に1965年の日韓基本条約と日韓請求権協定で「解決済み」なのでしょうか。

そうでないことは学問的にも政治的にもすでに長く指摘されてきました。にもかかわらず、こうした声は無視され、解決とは程遠い歴史修正主義的な主張ばかりが日本では浸透しつつあります。

改めて日韓基本条約・日韓請求権協定をめぐる問題の所在をさまざまな角度から検証することで、日本と朝鮮半島とのあいだに突き刺さった「解決済み」という棘を抜き、解決の方向性を歴史から真摯に学ぶ機会にできるのではないかと考えます。

2020年度の文化センターアリラン連続講座は、こうした問題意識に立って企画しました。ぜひご参加ください。

◆第1回 吉澤文寿(新潟国際情報大学教授)「日韓・日朝関係をどう解きほぐすか―国交正常化交渉の歴史的経過から―」2020年8月29日(土)

アジア・太平洋戦争中に「徴用工として日本で強制的に働かされた」と訴えた韓国人4 人に対して、韓国の最高裁判所が新日鉄住金に賠償命令を出した徴用工裁判から1 年―「嫌韓」が煽られる今の日本で、日本の植民地支配責任を認め、問題解決に向けた行動を起こす必要があります。日韓国交正常化とその後の日韓・日朝関係を振り返りつつ、日韓基本条約及び請求権協定などの意味を考えていきましょう。

◆ 第2回 金哲秀(朝鮮大学校朝鮮問題研究センター教授)未清算の朝鮮人遺骨問題について」2020年9月26日(土)

 日本各地に朝鮮人の遺骨が数多く散在している。これは植民地支配によって日本に渡ってきた人々と戦時下の強制連行・強制労働の過程で死亡したり、解放後に死亡して「無縁」になった人々のものである。なぜ遺骨は放置されたままなのか、遺骨問題の現状を整理し、問題解決にむけた課題について考えたい。

 ◆第3回 田中宏(一橋大学名誉教授)「在日朝鮮人差別と日韓・日朝関係」2020年10月17日(土)

在日朝鮮人差別の問題は、古くて新しい問題である。どう考えたらいいのだろう。タテ軸とヨコ軸で考えると、どういうことが見えてくるだろうか。ベルサイユ講和会議で人種差別撤廃を訴えた日本政府代表牧野伸顕、サンフランシスコ講和会議への韓国参加に猛反対し、それを実現した吉田茂首相(牧野はその岳父)……。日本の植民地研究の第一人者・矢内原忠雄は、戦後に何を語ったか。ご一緒に考えて見ましょう。

 ◆第4回 李玲実(一橋大学大学院博士課程)「朝鮮近現代史から考える日本軍「慰安婦」問題」2020年11月28日(土)

日本軍「慰安婦」問題の歴史について、朝鮮史の視点から考察します。特に植民地支配責任の系譜を探るべく、植民地解放直後の南北朝鮮、また在日朝鮮人運動の中で、日本によって朝鮮半島に導入された国家管理売春制度がどのように論じられたのかについて考えたいとおもいます。

 ◆第5回 内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授「朝鮮人戦犯――何を裁かれたのか、なぜ、裁かれたのか」2020年12月5日(土)

戦争犯罪人という言葉から、わたしたちは東条英機など戦争指導者を思い描く。だが、「通例の戦争犯罪」を犯したと、920人が死刑になっている。いわゆるBC級戦犯である。この中に23人の朝鮮人がいる。一人はアメリカのマニラ裁判で裁かれた比島捕虜所所長洪思翊中将、8人は中国裁判での通訳など。残る14人は捕虜収容所の監視員である。「日本人」として裁かれ、処刑された彼らーー英米豪蘭の軍事法廷は、何を裁いたのか。

そして巣鴨刑務所での日本の理不尽な処遇――不条理という言葉では言い尽くせない怒りが、今なお、彼らを「謝罪・補償」要求に駆り立てるーー。

 ◆第6回 李柄輝(朝鮮大学校教員)「朝鮮民主主義人民共和国と日本の関係―歴史・現状・課題」2020年12月19日(土)

今年は、朝鮮民主主義人民共和国と日本との間に国交正常化交渉の端を開いた、朝鮮労働党・自由民主党・日本社会党の三党共同宣言(1990年9月28日)発表から30周年を迎える。両国の間に横たわる「1945年以前の問題」と共に、朝鮮停戦体制に規定された「1945年以後の問題」に焦点を当て、両国間の克服すべき課題について考える。

◆第7回 米津篤八(朝鮮語翻訳家/一橋大学大学院社会学研究科博士課程)「朝鮮戦争時の“思想戦”としての日本の報道」 2021年1月23日(土)

1950年、日本外務省は朝鮮戦争を「思想戦」と位置づけ、「あいまいな態度をとることは、実戦における敵前逃亡と同じ」であるとして、日本国民の「決意」を促した。当時、GHQの統制下にあった日本のメディアも、思想戦の“武器”として朝鮮戦争に深く関わることになった。戦時下の韓国に派遣された日本人従軍記者たちの記事を分析し、朝鮮戦争が日本人の朝鮮観にいかなる影響を与えたかを探る。

◆第8回 中塚明(奈良女子大学名誉教授)「近代の日本は朝鮮で何をしたのか‐日本市民の歴史認識を考える」2021年2月20日(土)

日清戦争・日露戦争で日本は勝ち、大国の列に加わる望みをとげた。世界の少数の侵略的帝国主義諸国のグループに日本は新たに加わった。日本の勃興は、片や朝鮮の没落を意味した。╶╴この事実を知らないのか、書かないのか。韓国・朝鮮への偏見が一面に広がる日本の "市民社会"の歴史認識を考える。